心ときみの物語
まだ呼吸が整わない中、つぐみが今まで溜め込んでいた想いを宗一郎にぶつける。
「もっとしっかりしてよ!なんでそんな風になったの?なんで変わろうとしてくれないの?」
「………」
「私もまゆかもどんな気持ちで家に帰って、お父さんの顔を見てるか分かる?もう限界。こんな生活耐えられない……っ!」
つぐみの瞳には涙が溜まっていた。
きっとこの家の空気とまゆかだけは守らないとって重圧をひとりきりで抱えていたんだと思う。
「……俺はダメ人間なんだよ」
宗一郎がそう呟くと、つぐみは勢いよく近づいて父親の顔を平手打ちした。
「ふざけないでよ!ダメってなに?なにがダメなの?」
「………」
「お母さんが死んでどんどん変わっていくお父さんがイヤというより悲しかった。軽蔑した目で見たこともあったし、きつい言葉で罵ったこともあった」
「………」
「お互いにイライラして、どうしようもないその気持ちをぶつけ合うしか方法がなかった」
散らかったままの部屋。
そこに穏やかな日常なんてなくて、帰る場所のはずが帰りたくない場所へと変わった。
「お父さんはずっとどう思ってたの?物に当たってお酒に頼るんじゃなくて、ちゃんと言ってよ!」
そうつぐみが訴えると、やっと宗一郎が口を開いた。