心ときみの物語


「ずっとお前たちに申し訳なく思ってた。母親を死なせてしまったこと。あの日、俺が死んだらよかったのにって……」

宗一郎は震える声でそう言った。

俺はどっちの味方でもない。

でも最愛の人を亡くした気持ちなら少しは理解できる。

それは誰かの人生を大きく変えてしまうような出来事で。それを一番近くで、しかも自分のせいで死なせてしまった後悔は計り知れない。

気丈に振る舞おうとしても頭から離れなくて、
後悔と責任の重さだけがひどく体にのし掛かる。

その苦しさや娘たちへの申し訳なさで、それは気が狂いそうなほど。

だから酒に手を伸ばしてしまう。正しくないと分かっていてもそうするしか気を紛らわすことができない。

それぐらい大人は弱い生き物だ。


「……なんなのそれ。じゃ、お父さんがそんな風になったのは私たちのせいだって言うの?」

つぐみがグッと強い目をした。そして……。


「私、ずっとお父さんを見てイライラしてたのは、もっと頼ってほしかったからだよ。後悔なんてもうしなくていいよ。……それに押し潰されないで」

つぐみはやっと涙をポロポロと流しはじめた。
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