心ときみの物語
すると、それを見た宗一郎も堪えきれずに「……うう……」と声を上げて泣いた。
「お父さん」
つぐみがそっと父親の手に触れる。
「色々と失ったけど、家族三人で頑張ろうよ。私も苦しかったらちゃんと言う。ダメな時はダメだって、助けてほしい時もちゃんと言うから。だからお父さんも言って」
「……つぐみ」
「助け合えるよ。家族なんだから」
濡れた瞳でニコリと笑うつぐみはとてもいい顔をしていた。
それを見守っていた俺は静かに窓から離れて。
その後ろにはまゆかと小鞠の姿。
「ねえ、お姉ちゃんとお父さんは?家の中にもう入っていいの?」と、まゆかが小鞠の顔を見る。
暫くして家からはまゆかを迎えにつぐみと宗一郎が仲良く外に出てきた。その表情は晴れやかで、もう迷いはない。
家族の縁なんて容易く切れるものじゃない。
つぐみはきっと縁を切りたかったんじゃなくて、結び直したかっただけだ。
強く強く、もうほどけないように。