心ときみの物語

***

それから数日が経って、桜の花は今日も寄り添うように咲き誇っていた。

高嶺神社は今日も朝から参拝者が訪れて、鈴乃緒の音が境内に鳴り響いている。そんな中、青空にポーンと黄色いボールが飛んでコロコロと足元へ。

それを拾ったのはつぐみだった。


「はい。外に飛ばさないように気をつけてね」

〝姉〟の顔でまゆかにボールを渡す。まゆかは「はーい!」と嬉しそうに笑って小鞠の元に走っていった。


「険しい顔よりやっぱりそういう顔してるほうが可愛いよ」

「は、は?チャラすぎ。バカみたい」

相変わらず男慣れはしてないみたいだけど。

つぐみは不自然に前髪を直したあと、胸を張って空を見上げた。


「バイトは蕎麦屋だけ続けてコンビニは辞めることにしたんだ。学校生活もムリなくちゃんとしたいし」

「ふーん」

「お父さんもすぐに仕事を探しはじめて今日面接にいった。私がスーツにアイロンをかけたんだよ?アイロンがけなんてしたことないのにしてくれって言うからさあ」

「嬉しそうじゃん」

「うるさいな」

いつものムスッとした顔も今日はどこか穏やかだ。
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