心ときみの物語
「それとね、お母さんの遺影も日が当たる一番いい場所に飾った。お父さんに聞いたらお母さんの死を受け入れるのが怖くて飾れなかったって。そういうこともちゃんと話した」
つぐみはそう言って、ボール遊びをするまゆかを微笑ましく見つめる。
「あのあとまゆかにね、バイトも減らすしお父さんの仕事が見つかるまで少し我慢させちゃうかもって言ったら『お姉ちゃん私、我慢したい!』って言われちゃった」
「………」
「それが可哀想だって思ってるかもしれないけど私は可哀想なんかじゃないよって。大変なことが多くても家族みんなでいれば大丈夫だよって」
「………」
「ずっと幼いままだと思ってたのに、まゆかのほうがずっと大人だったしちゃんと分かってた」
ふわりと、爽やかな風が吹いて。俺はその風に乗せて〝あるもの〟をつぐみに差し出した。
「え……な、なんで?」とつぐみが目を丸くする。
それは淡いブラウン色のクマのぬいぐるみ。