心ときみの物語
4話 絆ときみと旅情と
今日も人々は色々な願いを抱えてここにやってくる。
その願いを手のひらで合わせて、目を瞑り心で唱える。
自分のため、誰かのため。
小さなこと、大きなこと。
欲望、願望、切望。
きっと誰もが、目に見えない存在に想いを託す。
ここは高嶺神社。
――別名、縁結びの神社。
東の空から木枯らしが吹いて、新緑だった木々たちを朱色に染めていく。
その色づいた紅葉がはらり、はらりと地面に落ちると、それはまるで赤い絨毯(じゅうたん)のようで人々の心を魅了していた。
そんな秋空の下、ゆっくりと神社の鳥居を抜けて。カランコロンと下駄の音を響かせるひとつの影。
「こんにちは。なにをお探しですか?」
竹箒で枯れ葉を集めながら、ずっと社務所の前で佇(たたず)むひとりの女性に巫女が声をかける。
「あの……〝裏絵馬〟を探しているんですけど……」