心ときみの物語
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「はあ、幸せですねー」
少し肌寒くなってきた季節。
神社の外を歩く人たちの服装は半袖から長袖に変わり、本当に季節が移りゆくのは早い。
そんな中、ちっとも変わらないのは小鞠の驚くほど敏感な嗅覚だけ。
「半分食べます?」
「俺の金だろ」
小鞠が差し出したホクホクの焼き芋を割って、
その湯気と一緒に口に入れた。
軽トラックのスピーカーからはお馴染みの「石焼きいも~」というフレーズが流れていて。
表の高嶺神社にいたならまだしも、いつもの古びた本殿でゴロゴロと過ごしていたら小鞠がいきなり「焼き芋!」と叫びながら立ち上がって。
「美味しそうな匂いがします!食べたい!食べたいです!」と駄々をこねるから仕方なく買いにきたというわけ。
「もう一本食べたいなあ」
「ダメだ。さっき饅頭食ってただろ。太るぞ」
「食欲の秋ですよー」
最近、顔が丸くなったと言うと小鞠は激怒する。
どこを目指しているのか相変わらず分からないけど、心は常に乙女らしい。それもさっぱり分からない。