心ときみの物語
5話 春ときみと心情と
今日も人々は色々な願いを抱えてここにやってくる。
その願いを手のひらで合わせて、目を瞑り心で唱える。
自分のため、誰かのため。
小さなこと、大きなこと。
欲望、願望、切望。
きっと誰もが、目に見えない存在に想いを託す。
ここは高嶺神社。
――別名、縁結びの神社。
深々と降り積もる雪は春の目覚めを遅らせる。
そんな寒い日にも高嶺神社には願いびとがやってくる。
夢や希望とは違い、神様に願い事をするその胸に秘めた想いは決して他言してはならないと言われている。それもまた我慢の修行だと。
だけど口に出さなければ叶わない願いもある。
叶うとは10回口に出すと書くからだ。
生まれたてのように真っ白な粉雪は、自然と歩く足を速める。はあ、と煙のような息をはいて。
今日もまた、ここにひとり。
「こんにちは。なにをお探しですか?」
同じように白い息を出して。寒さの中でも変わらない笑顔で巫女がニコリと問いかける。
「あの……〝エニシさま〟に会いたいんですけど……」