空と君とダイヤモンドと
「まただめか」



塁くんがそっとあたしの手を離して立ち上がる。



「塁、くん…」



歩き出した塁くんを追いかける。



「わかってんだ。俺が選ばれないことぐらい」



塁くんがあたしに背を向けたまま話す。



「そんなこと…」


「でも、人生なにがあるかわかんないからさ。やっぱ期待したいじゃん」


「…うん」



ひとつひとつの塁くんの言葉を拾い上げる。



「なにかひとつのプレーを見てくれる人がいてさ。俺、内野だし琉希に比べたら目立たないけど、守備だけは確実にやってきたしホームランだって打った。それだけじゃダメなんだろうけどやっぱ悔しい」



塁くんの目から光ものが零れ落ちる。



「るい、くん!」



あたしは塁くんの手を掴んで食堂から廊下へ走る。



「情けないよな。彼女の前で泣くとかさ」


「そんなことないよ。あたしは塁くんのことたくさん知りたい!」



塁くんの手を更にぎゅっと握る。

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