空と君とダイヤモンドと
「傷つけるって…」


「なんでだろうね。瑛梨奈ちゃんが大切すぎて。バカでしょ?」



〝バカでしょ?〟なんて笑う塁くんにふるふると首を横に振る。
バカなんて思わない。


さっきまで緊張していた気持ちが揺らいでいく気がする。
やっぱりこの人はすごい。
あたしを落ち着かせる魔法をもってるのではないだろうか。



「そんなに大切?」


「うん。瑛梨奈ちゃんのことすごい大切にしたい」



塁くんの言葉に握られた手をぎゅっと握りしめる。



「ワカとキスしたよね?」


「…うん」



ワカとなんて付き合う前からキスされてたし。
付き合ってるときも。
まして別れた後もなんて言えない。



「だよね…」



塁くんの顔がゆらりと近づいてくる。



「え、ここ…」


「暗いから大丈夫」



唇に指を当てられ〝黙って〟って言う合図だと感じその通り黙る。


にこっと笑った塁くんの唇があたしの唇に軽く触れる。

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