空と君とダイヤモンドと
「電気決してね…」



こんなどうでもいいこと言ってみる。



「だーめ」



甘さたっぷりの声であたしの手を握って歩いていく。



うっ。
これからほんとにこの部屋の中で。
一気に緊張があたしの中に広がる。



「そんな緊張しないで」



寝室のドアを開ける前に塁くんがあたしの顔を覗き込む。



「だって、初めてだから…」


「俺だって、瑛梨奈ちゃんに触れるの初めてじゃん」


「でも、塁くんは経験してるから」



初めてのあたしと
経験者のあたし。
ちゃんとできるのか不安になってしまう。



「あのね、前なんてどうでもいいの」


「え?」


「俺にとっていまこの瞬間が大事なの。瑛梨奈ちゃんとの初体験だから大事にしたいの」


「塁、くん」


「俺がリードするなんてそんなことは言えないけど、大事にするから」


「…うん」



あたしの中の緊張が溶けていく。
この人はすごい。
ちゃんとあたしの欲しい言葉がわかってる。

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