空と君とダイヤモンドと
「そういえば、兄貴の店行ったろ?」


「あー、うん」



潤さんというと、潤さんの家で塁くんと…。
と考えてしまって恥ずかしい。



「兄貴の家で?」



意味ありげに笑う。



「…な、なによ」



ワカとだけはこういう話をしたくない。
塁君とのことはなるべく知られたくないんだ。



「あーあ。先こされた」


「へ?」


「だって、俺瑛梨奈としてないもん」



平然とそんなことを言うワカにあたしは顔が赤くなる一方。



「ばっ…」


「今からする?」



なんてあたしの手を取って聞いてくる。



「バカっ」


「冗談だって。赤くなりすぎ」



ふっと大人びた顔で笑う。
ときどきワカは知らない顔をする。
今だって知らない顔をした。
と思ったらすぐに元に戻る。



「知られたくなかった…」


「そんなん付き合ってんだから当たり前のことだろ」


当たり前のことかもしれない。
でも、ワカに知られるのだけは嫌だった。

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