金木犀の季節に
「おい! お前がチクったんだろ?」
教室の隅に人だかりができていて、その中心には怒鳴る志水と、昨日化粧をしていた川村みほがいた。
その隣には、理穂たちが。
「花奏と優希葉と陽菜! こっち来て!」
荷物を机に引っ掛け、理穂のところまで行って、尋ねた。
「どうしたの?」
「ラインで送ったじゃん」
答えた彼女の声はどこか嬉しそうだった。
「ごめん。きのうライン開いてなかったわ」
ちゃんとみてよ、と言いつつ悪口星人の一員である、なつみが丁寧に説明してくれた。
川村みほがクラスメイトの校則違反をすべて教師へ教えたらしい。
これだけ聞くと、みほの方が正しいように聞こえるけれど、問題はそこではない。
なによりもみんなが怒っているのは、彼女自身も校則を破っているのにもかかわらず、自分のことは棚に上げ、クラスのことを悪者に仕立てあげたからだ。
みほが学校に化粧をしてきているのは周知の事実として、実際、私も彼女がスマートフォンを授業中にいじっているのを見たことがある。