金木犀の季節に
今日も、高台からバイオリンが聞こえる。
八木さんの音だ。
今、彼が弾いているのは、『カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲』。
これは、『カヴァレリア・ルスティカーナ』というオペラの音楽だ。
このオペラは、シチリア島のある村が舞台だ。
トゥリッドゥはかつて美しい女ローラの恋人であったが、ローラは彼の兵役中に馬車屋のアルフィオと結婚してしまう。
除隊後帰郷したトゥリッドゥは、いったんはローラを忘れるべく、村娘サンタと婚約したけれど、結局は留守がちなアルフィオの目を盗んでローラと逢引を重ねる仲に戻ってしまった。
これをサンタが知ってしまう。
サンタは怒りのあまり、そのことをアルフィオに告げてしまう。
彼は激怒し復讐を誓い、サンタは事の重大な展開に後悔する。
ここで場を静めるように流れるのが、八木さんが弾いている間奏曲だ。
教会のミサが終わり、男たちはトゥリッドゥの母ルチアの酒場で乾杯する。
トゥリッドゥはアルフィオに杯を進めるが、断られる。
二人は決闘を申し合わせ、アルフィオはいったん去る。
トゥリッドゥは酒に酔ったふりをしながら母に「もし自分が死んだらサンタを頼む」と歌う。
トゥリッドゥが酒場を出て行きしばらくすると
「トゥリッドゥさんが殺された」
という女の悲鳴が2度響き、村人の驚きの声と共に幕を閉じる。