金木犀の季節に


「奏汰さん」
「ん?」

「また私と一緒に演奏してもらえませんか!?」

「喜んで!」

私にとっては告白のようにドキドキする申し出だったのだけれど、奏汰さんにはそう届いていないようで良かった。

彼が調弦を始めた。
私もバイオリンを準備する。

「何を弾きたい?」
「それじゃあ『タイスの瞑想曲』が弾きたいな」

タメ口で質問に答えたが、どこかたどたどしくなってしまう。

しかし、バイオリンの演奏は全くそんなことは無かった。
あたかも幼いころからお互いを知っているかのように音が重なる。
まだ二回しか合わせたことがないとは思えない。

こういうのを、「運命」と言うのではないだろうか、なんて馬鹿みたいなことを思わず思ってしまう。


< 26 / 98 >

この作品をシェア

pagetop