金木犀の季節に
「奏汰さん」
「ん?」
「また私と一緒に演奏してもらえませんか!?」
「喜んで!」
私にとっては告白のようにドキドキする申し出だったのだけれど、奏汰さんにはそう届いていないようで良かった。
彼が調弦を始めた。
私もバイオリンを準備する。
「何を弾きたい?」
「それじゃあ『タイスの瞑想曲』が弾きたいな」
タメ口で質問に答えたが、どこかたどたどしくなってしまう。
しかし、バイオリンの演奏は全くそんなことは無かった。
あたかも幼いころからお互いを知っているかのように音が重なる。
まだ二回しか合わせたことがないとは思えない。
こういうのを、「運命」と言うのではないだろうか、なんて馬鹿みたいなことを思わず思ってしまう。