金木犀の季節に
人間関係が嫌だ。
みほが悪いけれど、理穂も志水もやりすぎなのでは。さっきまでとはがらりと意見が違う。
ああ、私は情けない。
優柔不断かつ、卑怯だ。
それなのに奏汰さんは、私の心の不協和音を拾って、新しいメロディーを作ってくれる。
こんな人は、一生のうちになかなか出会えるものではないと、十五年しか生きてなくてもよくわかる。
「人は、一人では居られない生き物なんだよな」
と、あるバイオリニストは呟いた。
そして、今、彼は自分の楽器に何かを囁いた。
「……う」
うまく聞き取れなかったけど、私は大して気にしなかった。
だって、時は変わらずに流れていくものだと思っていたから……。