金木犀の季節に



花奏、と声をかけられてはっとした。

「あ、理穂。どうしたの?」
「ねえ、見て。今日みほちゃん化粧してる」

理穂がそう言うと、

「ほんとだ。男でもできたのかな?」
「なわけ。あれに男ができたとしたらまじギャグだわ」

私が返事をするよりも早く同じグループの子が言葉を交わす。
よくもまあ、こんなに悪口が素早く思い浮かぶものだ。

このグループは仲良しにみせかけて、実は二つに割れている。
私と陽菜と優希葉(ゆきは)の三人と、理穂が率いる三人。
ちなみに、理穂たちは誰かの悪口になると活き活きし始めるから、心の中で「悪口星人」なんていうあだ名をつけてしまった。

こんなにギスギスしているのなら一緒にいなければいいのに、と思うかもしれないが、それではダメなのだ。
悪口星人たちは、それなりの女の子と数人でつるむことによって、いわゆる「一軍系女子」というステータスが欲しいらしいから。


< 3 / 98 >

この作品をシェア

pagetop