金木犀の季節に
正直に言うと、私は逢坂理穂という人間が嫌いだ。
彼女について説明させてもらおう。
自己紹介で、好きなものはスタバのフラペチーノというが、本当は何よりも悪口と男が好き。
そして嫌いなものは自分よりも目立つもの。
「一軍系男子」とはなすときは、明らかに声のトーンが変わる。
こういう女をぶりっ子と呼ぶのだろう。
ここだけの話、理穂はそこまで可愛いわけではない。
だからこそ、あの猫なで声を聞くたび、私の心の中の黒い部分が動き始め、やがて誰にも聞こえないところで叫び出す。
「ぶりっ子する前に鏡を見ろ」
と。
しかし、ここまで言っておきながら、理穂との友達ごっこをやめられないのは、怖いから。
きっと、この人を捨てたとしたら、周りからの目はがらりと変わる。
ひとりになりたくないから、私は今の関係を保つことしかできない。
たとえ、自分自身に嘘をついても。