金木犀の季節に
考えている間にも時は流れた。
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」
外から、かすかに午後五時を知らせるチャイムが聞こえてきた。
「やばいじゃん。早く行かなきゃ」
台所から四十五リットルのビニール袋を探す。
「どうして見つからないの!?」
すべての引き出しを開けて、荒っぽく中を見た。
そして、食器棚の一番下を開けたとき、半透明のビニール袋を見つけると、最後の一枚だということも気にせずそれを楽器に被せて家を飛び出した。