金木犀の季節に



未来にいる私のために、わざと名前を平仮名で書いていてくれたんだ。

私がたったの数分で読み終えたこの手紙を、あの人はいったい何時間かけて書いてくれたのだろう……。


どこまでも奏汰さんは優しい。
一番不安なのはきっと彼自身だ。
それなのに私を励ましてくれるなんて。

その遺書の隣に、写真が置いてあった。
うさぎを抱きながら六人の男性が笑っている写真。
その中でも私には奏汰さんが浮き上がっているかのようにすぐ見つかる。


相変わらずの柔らかい笑顔と、指先の形だけでも、あの人を鮮明に思い出すのには十分すぎるくらいだ。

周りにいる人たちも優しそう。
うさぎを抱く腕は、どれも優しくて、生きているものすべてが愛らしい、とでもいいたけだ。



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