金木犀の季節に
「花奏、大丈夫?」
優希葉と陽菜が、私の手を引いて外のベンチへ連れていってくれた。
理穂たちはいつの間にかいなくなっていたようだ。
それから、特攻の島の高い空の下、二人に抱きつきながら、私はわんわん泣いた。
一生分の涙を使い切ってしまったのではと思うくらい。
目を閉じると浮かぶ、三日間の奇跡に、心は奪われたまま。
涙がこぼれて、思いは変わっていないことを知らされる。
数十分の後、大分落ち着いた私は、記念館へ戻ることにした。
「二人ともありがとう」
悩みばかりの学校生活。
それでも、この二人がいてよかったと、心から思う。
ベンチから立ち上がって、空を仰いだ。眩しくて、高くて……。
私は今、生きている。