【完】蜂蜜色のヒーロー。
「………」
冷たい目でじっと私を見据える路惟くんが、先輩にも限らず一ノ瀬先輩の胸をどんっと強く押して、避けきれなかったそれを、避けてくれた。
よ……よかった。
「あれ、誰かと思えば、クールで無関心なことで有名な御津路惟くんじゃん」
「……ひとつ、忘れてますよ」
「え?」
「クールで無関心だけど、“妃莉のことが大好き”ってこと、忘れてますよ」
今日付き合い始めたばかりだから、まだ噂にこそなっていないけど、たぶんクラスメイトは気づいてると思う。
路惟くん、朝から私にべったりしてくれていた、から。
だけど、一ノ瀬先輩は当たり前だけどクラスにはいないから、まだ知らなかったんだと思うし、どうせ遊びだろうからすぐ別のひとに移る、よね……?
だって一ノ瀬先輩、女遊びがすごいってことで有名だし。