【完】蜂蜜色のヒーロー。
思い出に残らない話ばかりかもしれないけど、それでもよかった。ただ今は、路惟くんと付き合ってるっていう事実だけが支えだった。
長谷川くんに連絡をする気はないけど、どうしても電話番号とメアドの書かれたメモ用紙が棄てられないのは。
ものすごく悲しそうな目で私を見ていたことが、脳裏に焼きついたから。
騙す方法はたくさんあるよね、という私の言葉を聞いたとき、彼はほんの一瞬、寂しそうな顔で唇を食いしばっていた。
もし、本当にあのときのこと後悔していたなら、私は長谷川くんの話に付き合ってあげるべきだった?
……わかんないよ。
一度自分を騙していたひとの言うことなんて、どれが正解でどれが嘘なのか、すぐには見分けられない。
当時の私は、長谷川くんのすべてを信じていたし、まさか嘘だとわかっているのに付き合っていたわけでもない。
私が信じていたものを、平気で踏みにじって裏切ったひとを信用するなんて、簡単なことじゃない。
根に持つタイプではないよ。