【完】蜂蜜色のヒーロー。
わかってる、わかってるけど……。
私がしてるのは、愛用している携帯小説アプリによく出てくる悲劇のヒロインと一緒だ。
あんな風にことが進むなら、私は路惟くんを傷つけた上に別れることになるって、なんとなく思ってる。
小説のように、すべてが上手くいかないのもわかってるけど、ヒロインたちに向かって、『バカだなー』と思うこともある。
なにか問題があったときには、ちゃんと彼氏を頼ればいいのになぁ、と小説を読みながら勝手に思う。
でも……いざとなったら、自分の身に不幸が降りかかったら、そんな簡単に『頼る』なんてこと、できない。
「頑張ってみる、長谷川くんとのことは片付けなきゃって思ってたし」
「……ひとりで頑張れるの?」
「うん、大丈夫だよ。ちゃんと……、向き合わなきゃ」
それは、意識するより先に言葉になっていたもの。本当は逃げたい気持ちで、胸はいっぱいになっていたけど、頭の隅にはそんな思いがあったのかもしれない。
長谷川くんの気持ちを聞かずに、私は嫌いだとか、関わりたくないとか、そんなことを言ってしまった。
でも……もし本当に、謝りたいって思ってくれていたなら、向き合うべきなんだよ。
逃げてちゃいけない───向き合うべきものだって、あるんだから。