【完】蜂蜜色のヒーロー。


そのときのことを御津くんに話すと、「ああ」とようやく、合点がいったというように頷いた。


「半分嘘」


「う、嘘!? ……ん?」




嘘、ではなく……半分嘘?


それって、半分は本当のことって意味なんだよね?



「俺ん家、パン屋やっててさ。たまに手伝って、給料もらうんだよ。で、あの日はたまたま前日が、そうだったってだけ」


「え……じゃあ…」


「バイトはしてねぇよ」



けろりと言った彼は、ふっと息をついて、私が持ってきたそれを、ひと口ごくりと飲んだ。



「……あ、その匂いなんだ」


「は?」


「いつも、いい匂いするなーって思ってたから」


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