冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「逃れられず・・・どうしようもなくて・・・」

「ふん、それでお前は絶望して湖に身投げしたわけか」

「・・・・」

「結構な話じゃないか。借金のカタに娼館に売られててもおかしくないのに」

くちびるを結んで、ただうつむくしかない。

「歳はいくつだ?」

「18歳です・・」

「結婚に早すぎる年齢でもなし。いずれ誰かと結婚するなら、悪い相手ではなさそうだがな」

親族たちは、自分を結婚させ厄介払いすることしか頭にない。
自分を愛し慈しんでくれる人も思いやってくれる人も、もう誰もいない。
世界は暗黒に塗りこめられて、一片の光もない。

もういっそ・・・

そんな私情は結局のところ、この青年には関係のないことだ。


「———で、お前はなんでわざわざこの領内を死に場所に選んだんだ?」
クラウスの容赦ない追求が続く。

「ぁ・・あの、」
気力を総動員して、顔を上げる。
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