冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~



「ーーーフロイラは?」
リュカが差し出す新聞を受け取りながら、クラウスが口にする。

「今日も伏せっておいでのようです」
感情を律した声で、リュカが返す。

「そうか・・」

「現実を憂しと思えば思うほど、過去の想い出は美化されるのではないでしょうか」

お姉さま、か・・・新聞を開くガサガサという音にまぎれさせるように、クラウスがつぶやく。

「ーーー虫唾が走る」

ギリギリと主が奥歯を噛みしめる音が、リュカには聞こえた気がした。
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