冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
あとになって、あの屋敷に “なにか” があって引き払われたらしいと人が噂するのを耳にした。

それから二度と、ルーシャに会うことはなかった。

勇気と自己犠牲。
ひとの魂が持ちうる、最も美しく崇高なかたちを、フロイラはひとりの少女に見た。

それからずっと、フロイラはルーシャの面影を追いつづけている。原体験は強烈で、同時に男性がもたらす暴力の気配をひどく忌むようになった。


お姉さま・・・この手の温もりは・・・いえ、違う・・・


ーーーフロイラ、

クラウスさま?


ーーー無理に目を開けようとしなくていい。これは俺のひとりごとだ

心なしか穏やかな声だった。
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