冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
お前は世間知らずで、自分のことにもどこか疎い。
爵位を持ち身寄りのないうら若く美しい女性だ。

多くの男がお前を欲しがっている。愛やら誠実さやら財力やらを差し出してな。
中には歪んだ欲望を向けてくるやつもいる。

そんな連中からお前を守りたいーーーなんて口はばったいことを言う気はない。
俺もそんな男の一人だからな。

いちばんタチが悪いのに捕まって、お前もよくよく運がないな。

俺はお前を決して離さない。鎖なんぞでお前が縛れるものなら、とうに何重にもかけているさ。

だが、それではお前は手に入らない。
お前の全てを手に入れるのが、俺の望みだ。それがお前の望みでないとしても。


クラウスさま・・・


ーーーすべて夢だ、フロイラ。

ひたいをやさしく撫でられる。

ーーー目が覚めたら、忘れろ。

彼が立ち上がり、その気配が遠ざかってゆく。

懐かしい感触とどこか似た、その手の温もりを離したくないと願った。
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