冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~



「クラウス様が喜ぶこと、でございますか?」

はい、とフロイラは神妙にうなずく。
「クラウス様はわたしにもったいないほどよくして下さいます。わたしは何もお返しできていないので・・・」

お茶を淹れたり、詩を朗読したり、本を用意したり・・・そんなことは結局、フロイラでなくてもできることだ。

「抱きついて、くちづけて差し上げれば喜ぶのではないでしょうか」

「・・・リュカ様でも冗談を口にされることがあるんですね、なんだか意外で」

「私は冗談は好みません」
にこりともせずに、リュカは返す。

「ぇ・・・」

失礼致しますと、かるく一礼しリュカは背を向けた。


わたしがクラウス様に抱きついて、えっと・・・リュカ様は本気でおっしゃっているの?

頬に手を当てると、もう熱くなっているのが分かった。
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