冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
フロイラの意思を抜きに、事態は着々と進められてゆく。

よこされた10人ほどの男女によって、荷物はトランクに詰め込まれ引っ越しの手はずが整えられる。

この家を離れることになるのか。生まれ育った、思い出がいっぱいのこの家を・・・そのことに、胸が締めつけられる。

「ご令嬢の望むものは、すべてお持ちするように言われております。何でもお申しつけ下さい」

そう言われると、ついあれもこれも(擦り切れた炉端の敷物や、くたびれたスリッパ、ロウソクの火を消すためのスナッファー・・・などなど)詰めてほしいとお願いしてしまう。
叶うなら、家ごと領地の片隅に移してほしいくらいだ。

心細さに枕を濡らしながら一人夜を明かし、そしていま・・・

馬車は吸いこまれるようにように、ヴィンターハルター邸の門扉をくぐってゆく。
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