冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「こいつは俺が葬った女だ」
クラウスの声はどこか苦しげで、手負いの獣を思わせた。

「ーーーそんな、ルーシャは・・・」
最悪の想像にフロイラは息を飲み、言葉を失う。

フロイラを見下ろして、クラウスが苦い笑いを浮かべてみせた。
「生きてはいるさ。とうていお前の望む姿ではないがな」

「お願いです。ルーシャに会わせてください」

「会ってどうする」

「わたしはその方と運命を共にします」
言葉が口をついて出る。

「たとえばルーシャがどこかへ幽閉されているのなら、わたしもそこへ籠めてください。彼女が娼婦へ身を落としているなら、わたしも同じ身になります。わたしが今こうしていられるのは、ルーシャの存在があったからこそ。
どんな姿になっていても、どんな境遇にあっても、彼女と共にありたい。それがわたしの心からの望みです。
お願いです、どうか、どうか・・・」

あふれ出す言葉たちは、しだいに涙に沈んでゆく。

頬をつたう熱い雫が、クラウスの靴に落ちて、ポッ、ポツと小さな音を刻む。
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