冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
クラウス様・・・・

お許しください。
思わず心の中でそう叫んでいた。

踏みにじられ絵の具は崩れ、もはや原型をとどめていないルーシャの絵を抱きしめる。

ルーシャ、わたしはどうすればいいの。やっとあなたに会えそうなのに。嬉しくてたまらないはずなのに・・・・

クラウスの背の残像が、まぶたから消えない。ルーシャに会いたいと望むことは、そんなにも彼を苦しめることなのか。

どうしてこんなにも、引き裂かれた気持ちになるの・・・・誰かを傷つけたいわけじゃないのに・・・

苦しいほどに、涙がこぼれる。

それが誰のために、なんのために流されるものなのか、もはやフロイラには分からなかった。
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