冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
その晩の食事は、なんとも気詰まりなものだった。
クラウスも給仕をつとめるリュカも終始無言で、フロイラにはその沈黙を破ろうとする度胸はない。

カチャカチャとカトラリーが皿に触れる音だけが、テーブルに響く。

怒りというより、クラウスはひどく深い思索に沈んでいるように感じられた。
それがなんなのか知りたいと思う。

そしてーーー本当にルーシャに会えるのだろうか。彼女はいまどこに・・・?


脳裏にルーシャの姿を描こうとすると、踏みにじられ損なわれてしまった絵が浮かんでくる。

そのままにしておけず、フロイラはもとからかけてあった布にくるみ、腕に抱えて自室へと運んだ。
木枠は割れ生地は破れかけ、もはや修復も無理だろう。それでもルーシャを手元に置いておきたかった。

クラウスが知ったらどう思うか。
そのことはひとまず棚に上げておくことにした。
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