冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
仄暗い戸外へと足を踏み出す。
しんと静まりかえった、いうなれば灰色の時間だった。月は舞台のそでへ退場し、太陽はまだ帳の奥へ隠れている。
ただその光の端が雲にうつり、世界はぼうと滲んでいるようだ。
そのなかを、フロイラは小走りに裏庭をめざす。
庭園の緑は夜露にぬれ、みな色彩をうしなっていた。空気はじっと動かず、草も木も花も、静かに眠りについているように映る。
ルーシャの言ったとおりだ。昼の庭とはまったく違う光景がそこにはあった。
砂利のしかれた小径をたどり、イチイの並木を抜け、ツタをはわせたレンガ塀沿いに足を進める。
背の高い下草おおわれた、木の陰に人影がある。
灰色のうすもやにけぶる、プラチナブロンドの髪のーーー
違う!
一瞬足が止まり、そしてふたたび駆け寄る。
「ク、クラウスさま・・・!?」
愕然として、その名を呼ぶ。
混乱の極みに硬直するフロイラへと重たげな視線をよこし、「さすがにもう隠れられないな、ここには」とつぶやいた。
考えてみれば、子どもの体がやっと入るくらいの隙間だった。
いや、そんなことよりーーー
しんと静まりかえった、いうなれば灰色の時間だった。月は舞台のそでへ退場し、太陽はまだ帳の奥へ隠れている。
ただその光の端が雲にうつり、世界はぼうと滲んでいるようだ。
そのなかを、フロイラは小走りに裏庭をめざす。
庭園の緑は夜露にぬれ、みな色彩をうしなっていた。空気はじっと動かず、草も木も花も、静かに眠りについているように映る。
ルーシャの言ったとおりだ。昼の庭とはまったく違う光景がそこにはあった。
砂利のしかれた小径をたどり、イチイの並木を抜け、ツタをはわせたレンガ塀沿いに足を進める。
背の高い下草おおわれた、木の陰に人影がある。
灰色のうすもやにけぶる、プラチナブロンドの髪のーーー
違う!
一瞬足が止まり、そしてふたたび駆け寄る。
「ク、クラウスさま・・・!?」
愕然として、その名を呼ぶ。
混乱の極みに硬直するフロイラへと重たげな視線をよこし、「さすがにもう隠れられないな、ここには」とつぶやいた。
考えてみれば、子どもの体がやっと入るくらいの隙間だった。
いや、そんなことよりーーー