冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
———数日後、
供もほとんどつけず、突然来訪した侯爵とその家令に、まだ若い農夫とその妻は仰天した。
噂でしか聞いたことがないが、一人は赤と黒が入り混じる珍しい複色の髪に端正な面差しで、もう一人は長身に黒髪、眼鏡をかけて、影のようにひかえている。
ヴィンターハルター侯爵とその家令に間違いあるまい、と呆気にとられながら、その場に突っ立っていることしかできなかった。
「こちらで羊とヤギの合いの仔が生まれたと聞いた。見せてもらえないか」
単刀直入にクラウスは口にした。
ためらいながらも通されたのは、粗末な家畜小屋だった。
一つの仕切りの中、あまり清潔とはいいがたい寝わらの上に、“それ” はいた。
一匹だけで、じっとうずくまっている。
「う、生まれたときからおかしかったんです」
農夫は、なぜか言い訳するような口調だった。
供もほとんどつけず、突然来訪した侯爵とその家令に、まだ若い農夫とその妻は仰天した。
噂でしか聞いたことがないが、一人は赤と黒が入り混じる珍しい複色の髪に端正な面差しで、もう一人は長身に黒髪、眼鏡をかけて、影のようにひかえている。
ヴィンターハルター侯爵とその家令に間違いあるまい、と呆気にとられながら、その場に突っ立っていることしかできなかった。
「こちらで羊とヤギの合いの仔が生まれたと聞いた。見せてもらえないか」
単刀直入にクラウスは口にした。
ためらいながらも通されたのは、粗末な家畜小屋だった。
一つの仕切りの中、あまり清潔とはいいがたい寝わらの上に、“それ” はいた。
一匹だけで、じっとうずくまっている。
「う、生まれたときからおかしかったんです」
農夫は、なぜか言い訳するような口調だった。