冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
いい香りのお茶と、宝石のようなお菓子がふるまわれ、フロイラは自分がおとぎ話の主人公になったような心地だった。
泣いていた自分のところへ綺麗で優しいお姫様が現れて、お人形を元どおりにしてくれたうえ、お城のようなお屋敷のティーパーティーに招かれている。
フロイラはエプロンのポケットからハンカチを取り出した。
「どうしたの?」
ルシアナが訊く。
「ボンボンを少し包んで持って帰ってもいいかしら。お母様にもあげたいの」
「バスケットに詰めればいいわ。それより明日もいらっしゃいよ」
それが二人の出会いだった。
今にして思えば、療養所という特殊な状況が、本来交わるはずのなかった二人を引き合わせたのだ。
ルシアナの母もやはり病気で、都会を離れ空気の澄んだこの湖畔地方で静養しているという話だった。
「わたしのお母様は病気なの。屋敷の外に出ることも滅多にないわ。わたしはここでお母様と住んでいるの」
そう言ったルシアナの瞳には、幼い少女らしからぬ翳りがさした。
泣いていた自分のところへ綺麗で優しいお姫様が現れて、お人形を元どおりにしてくれたうえ、お城のようなお屋敷のティーパーティーに招かれている。
フロイラはエプロンのポケットからハンカチを取り出した。
「どうしたの?」
ルシアナが訊く。
「ボンボンを少し包んで持って帰ってもいいかしら。お母様にもあげたいの」
「バスケットに詰めればいいわ。それより明日もいらっしゃいよ」
それが二人の出会いだった。
今にして思えば、療養所という特殊な状況が、本来交わるはずのなかった二人を引き合わせたのだ。
ルシアナの母もやはり病気で、都会を離れ空気の澄んだこの湖畔地方で静養しているという話だった。
「わたしのお母様は病気なの。屋敷の外に出ることも滅多にないわ。わたしはここでお母様と住んでいるの」
そう言ったルシアナの瞳には、幼い少女らしからぬ翳りがさした。