冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
*    *    *


肌をつつむ、あたたかく柔らかな感触。
つかのま、自室のベッドでいつもの朝を迎えたような錯覚に陥る。

・・・居間の暖炉に火を起こして、お父さまのためのお茶をいれて———

違う!

わずかな、しかし厳とした違和感が、そこに差し込む。
ここは自分のベッドではない。

そして何より、お父さまは、父は・・・・

絶望とともに、息をのんで目を見開く。

「あら、気がつかれたようですわ」
朗らかな女性の声。

「まぁ、良かった」
「旦那様とリュカ様にお知らせして」

数人の女たちが自分をのぞきこんでくる。
黒い布地のドレスに、糊のきいた白いエプロン。頭にはキャップをかぶっている。
貴族の邸に仕えるメイドたちだ。
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