冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
第3章/舞踏会
*   *   *


「これくらいでいいかしら? きつくはない?」

「いえ、まったく。少しゆるいくらいです」

「巻き直さないと・・・」

「そう焦らずとも、フロイラ様」

「そういうわけにはいかないわ」
きゅっとくちびるを結んで、いったん巻いた包帯をまた全部ほどきにかかる。

目下、フロイラの唯一にして最大の仕事が、クラウスの包帯の交換だった。
朝夕二回、傷口を消毒して新しい包帯を巻く。

幸い傷口は順調にふさがっているので、もう医者に見せる必要はない。包帯を替えるだけなのだが、これが意外に難しかった。

医師と看護婦に教わり、あとは文字どおりメイドの手を借りて練習に励んでいる。

「難しいわ。きつく巻くと血の巡りが悪くなってしまうし、ゆるいと包帯がほどけてしまうし」
軽く嘆息する。
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