冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
同じ邸に住まっているのだから当然といえば当然だが、クラウスと接する時間はしぜんと増える。

フロイラにとっては、緊張の連続だった。

クラウスは基本的に寡黙な性質で、同じテーブルで食事をしていても、言葉を交わすことはあまりない。
フロイラとしては彼の気に障らないように、せいぜい身を縮めていた。

ときどき、自分が甲羅に首と手足を引っ込めている亀みたいだと思ったり。


フロイラは垣間見るだけだけれど、クラウスはかなり多忙な身のようだ。

アンナ・マリーから聞いたところによると、ヴィンターハルター家の所領地はこの邸の他にも各地にあり、その面積は広大なものだという。

その土地の管理と事業の運営が、彼の主な仕事だ。
若干二十歳のクラウスは、若く英明な領主として知られているという。
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