お見合い相手は冷血上司!?
第一話 冷血上司と〇〇すれば
頼りないほど青く透けた、いかにも春らしい空に桜が舞う。薄ピンクの絨毯が続く先には、制服姿の男女が並んで歩いていた。
彼女が持っていたリボンの付いた黒い筒を彼の喉元に突き付けると、自転車を押していた彼は、ぐっと顎を上げて目線だけを彼女に落とす。
『な、何だよ……』
今日だけ二人の胸に付けられた、大きな白い花が風に誘われて揺れた。彼女の髪がぶわりと舞い、その長い前髪の隙間から覗くイタズラな瞳が彼の呼吸を止める。
躍るように舞う桜が、二人の表情を隠した。
『意気地なし。私のことが好きなら、今のうちだからね! 大学に行ってイケメンの彼氏が出来ても……知らないよ?』
ゴクリとここまで聞こえてきそうなほど息を飲んだ彼は、先に駆け出した彼女を追って走り出す。
空に向かって一直線に飛び立つ春の鳥がフレームの端から端へ線を描き、空にかざした炭酸飲料のペットボトルがキラキラと輝くその時だった。
「ぐわー! 今回のコマーシャル、本当にいい出来だよ鈴原(すずはら)さん! こんなに大口の契約を成功させるなんて、君は営業課の希望の星だ!」
興奮気味にオフィスのど真ん中にあるテレビ画面に食いついているのは、上司の木津(きづ)主任。
彼女が持っていたリボンの付いた黒い筒を彼の喉元に突き付けると、自転車を押していた彼は、ぐっと顎を上げて目線だけを彼女に落とす。
『な、何だよ……』
今日だけ二人の胸に付けられた、大きな白い花が風に誘われて揺れた。彼女の髪がぶわりと舞い、その長い前髪の隙間から覗くイタズラな瞳が彼の呼吸を止める。
躍るように舞う桜が、二人の表情を隠した。
『意気地なし。私のことが好きなら、今のうちだからね! 大学に行ってイケメンの彼氏が出来ても……知らないよ?』
ゴクリとここまで聞こえてきそうなほど息を飲んだ彼は、先に駆け出した彼女を追って走り出す。
空に向かって一直線に飛び立つ春の鳥がフレームの端から端へ線を描き、空にかざした炭酸飲料のペットボトルがキラキラと輝くその時だった。
「ぐわー! 今回のコマーシャル、本当にいい出来だよ鈴原(すずはら)さん! こんなに大口の契約を成功させるなんて、君は営業課の希望の星だ!」
興奮気味にオフィスのど真ん中にあるテレビ画面に食いついているのは、上司の木津(きづ)主任。
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