お見合い相手は冷血上司!?
「こんなことなら、ヘッドホンでも持ってくるんだったな……」

 耳を塞ぎ、ベッドの上で膝と背中を丸める。

 課長はこれだけ雷が落ちていても、きっと涼しい顔でテレビを見たり、本を読んだりしているんだろうな。
 雷を怖がっている姿なんて、想像も出来ない。

 思わずクスッと笑みが零れていたことに気が付き、左右に首を大きく振った私は、居心地が悪くて顔を顰めた。

 課長が、私の思っていたような人じゃないのは分かっている。
 私のことを真剣に考えてくれていて、大切に思ってくれている気持ちに嘘がないことも、最初よりは分かっているつもりだ。

 でも、過去を受け止められたといっても、また誰かを好きになるのは、正直怖い。
 また裏切られたら。また両親につらい思いをさせたら……。
 そう思うと、彼の気持ちに向き合うことすら怖くなってしまうのだ。
 課長には、もっと……。

 頭を膝に落とした瞬間、一際大きな唸り声と共に、地面が揺れる。
 ブン、と小さな電子音がして、部屋からは光が消えた。
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