お見合い相手は冷血上司!?
「課長……」

 ペンライトの光を細めた彼は、私を廊下に出すと、空いた方の手で静かに扉を止める。
 ひどくほっとした私は、背を預けるようにして扉にもたれ掛かった。

「この間も、今日も、本当にひどい顔だな」

 クックッ……と小刻みに肩を揺らす課長。
 恥ずかしくていたたまれない思いに頭を垂れると、頭を温かい感触が撫でた。

 ふわりと舞うのは、甘い香り。
 ……いつもの課長の香りじゃない。あ、これってもしかして……ラベンダーの香り?

 その正体に気付いた私は、全身の血が沸騰したように身体中がカッと熱くなった。

「そのうち懐中電灯が配られるだろうが、それまでの繋ぎにでも使え」

「あ、ありがとうございます……」

 差し出されたペンライトを受け取ると、彼は安堵したように薄笑みを浮かべる。

「じゃあな。何かあったら呼べ」

 そう言って背を向け歩き出した彼の足は、すぐにピタリと止まった。
< 104 / 195 >

この作品をシェア

pagetop