お見合い相手は冷血上司!?
「…………おい」

 頭だけ振り返った課長が、眉を顰める。
 彼の視線がするりと落ちて、私もそれを辿るように視線を落とすと、私の右手は、ガッチリと彼のパーカーの裾を掴んでいた。

「えっ? あ、す、すみません!」

 慌てて手を離し、両手のひらを顔の横まで上げて後ずさる。
 何やってるんだ、私。

 急激に仕事を早める鼓動を落ち着かせようと、大きく深呼吸をした。

「なぜ謝る? 心細いなら、そう言え」

 こちらに向き直った彼は、私の頭に自身の手を重ねる。それは子供をあやすように優しい手つきで、ゆっくりと数回落ちてきた。
 胸がギュッと音を立てて窮屈に締め付けられる。

「……て、停電が……終わるまででいいので、一緒にいてもらえませんか?」

 俯いて、消え入りそうな声でも、今の私には精一杯だった。

「あぁ。何なら、明日の朝まででも構わないぞ」

 イタズラな笑みを零す課長。
 再び勢い良く後ずさると、「バカ、嘘だ」と彼は再び小刻みに肩を揺らした。
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