お見合い相手は冷血上司!?
「課長にも、そんな経験があるんですか?」

「俺をなんだと思ってるんだ。俺だって、人並みに苦手なものも、克服出来ていないものもある」
 
 彼は「当然だろ」と鼻で笑った。

「何となくですが、何かを怖いと思っている課長なんて想像がつかなくて……」

「お前には、そんなに立派に見えているのか?」

 返答に困る私を見た彼は険しい眉を少し解くと、真っ直ぐにこちらを見据えた。
 突然色を変えた鋭い視線に、緊張して何度も目を瞬かせる。

「……お前、気になっていないのか? 俺がどうして、相馬じゃなく黒瀬を名乗り、今の会社にいるのか」

 スッと細められた視線に心を見透かされるような気がして、思わず息を呑んだ。
 軽く深呼吸をすると、意を決して口を開く。

「気にならないと言えば嘘になると思います。けれど……もしそれが課長にとってとても大切なお話なら、私には……」

 聞く権利はない。
 絡み合う視線、先に逸らしたのは、課長だった。
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