お見合い相手は冷血上司!?
「ありがとう。そんなことより、亜子はどうなのよ? 端正なお顔立ちの強敵さんとは」

 慌てて桃の口を塞ぎ、エレベーターの中を見渡した。姿がないのを確認して、ほっと安堵の胸を撫で下ろす。

「な、何!? ちょっと待って……まさか、このビルの中にいる人なの!?」

 興奮して大きな声を出す彼女の口を再び塞ぎながら、「静かに!」と口の前で人差し指を立てた。
 しかし、同乗していた人たちが向けている訝しげな視線に気付き、「すみません」と眉と頭を下げる。

「……お願いだから桃、静かにして」

「どうして言わなかったのよ!」

 目を輝かせ始める彼女は、今から聞く気満々だ。話さないことには、このエレベーターからすら降ろしてもらえそうにない。

「わかった。お昼に話すから、静かにして……」

 ヨシッ、と胸の前で拳を作る彼女は、八階で開くエレベーターを鼻歌交じりで降りた。

 今日は朝から、こういう日なのか……?
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