お見合い相手は冷血上司!?
――「さぁ、どうなってるの!?」
来たばかりのアイスコーヒーのグラスを握り締めた桃は、鼻息を荒くさせている。
「いいから、先に食べようよ……」
お昼になり、こっそりオフィスから逃げ出そうとしていた私は、あっさりと桃に捕まってしまった。
さすがに社食で話すわけにはいかないので、私たちは以前雑誌を見ながら話していた駅前に出来たばかりのカフェへとやって来た。
ヴィンテージ風に加工された壁を這う緑の蔦を見つめ、ため息をつく。
ようやく来られたというのに、ギラギラとした眼差しをこちらに向けている彼女を見ると、とてもじゃないがゆっくりランチを楽しめそうにない。
ここに来るの、楽しみにしてたのにな。
冷たいアイスティーを一口飲むと、意を決して口を開いた。
「……課長なの」
ポツリと小さな声で告げる。
彼女はパチパチと何度も目を瞬かせたまま、動かなくなった。