お見合い相手は冷血上司!?
「ねぇ、桃?」

「……え、課長って、どこの課長? 下のフロアの食品輸入会社の課長? 上のフロアの薬品会社の課長? あ、うちの企画部の馬渕課長? それとも、クリエイティブ部の磯崎課長? あ、あいつはオヤジか。……ま、まさかとは思うけど……」

 早口で捲し立てる桃は、頭を抱えてパニックを起こしている。

「……そのまさか、黒瀬課長だよ」

 雷に打たれたかのように、目を見張り、口を大きく開けた彼女。
 その顔の前でヒラヒラと手を振るけれど、反応はない。

「黙っててごめんね。色々、言いにくいことがあって」

「ほ、本当に課長なの? あの冷血人間が、お見合い? それも前向きに!?」

 目を白黒させた彼女は、アイスコーヒーを一気に飲んだ。
 あっという間に空になったグラスのストローから口を離し、呼吸を落ち着かせている彼女は、少し落ち着いたのか、長い息を吐くと途端に顔を顰める。
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