お見合い相手は冷血上司!?
「ご無沙汰しております。……鈴原さん」

 “よそ行きの笑み”を浮かべた課長を見て、最悪の想像が確信に変わってしまった。

 恐る恐る振り返ると、そこには――

「鈴原さん、なんて他人行儀な。お義父さんって呼んでいただいてもいいんですよ! なんて! 一度言ってみたくて、すみませんねぇ」

 課長に会って舞い上がる父が立っていた。

「お父さん……」

 私のタイミングの悪さは、父譲りなのかもしれない。

「いやぁ、お邪魔をしてしまいすみませんでした。晴人さん、よかったら今度うちにでも遊びに来てください。うちの家内もお会いしたがってるんですよ」

「はい、ぜひ」

 満面の笑みで課長の手を取り握手を交わす父は、「ん?」と小さな声を上げると、不思議そうに首を傾げた。

「……あれ、晴人さん、お風邪ですか?」

「え、いや……」

 手を引っ込め珍しく目を見張った課長は、言葉を濁す。
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