お見合い相手は冷血上司!?
「お父さん、課長も疲れるから。帰ろう」

 駅の方へ促すと、血相を変えた父は私の両肩を正面からグッと掴んだ。

「これは大変じゃないか! 亜子、お前何かお手伝いしてきなさい!」

「えっ!? ちょ、ちょっと、何勝手なこと言ってるの!?」

 くるりと半回転させられて、父は課長に差し出すように私の背中を突き出す。
 抵抗するも、課長の目の前まで連れてこられた私は、困ったように彼を見上げた。

「晴人さん、一人暮らしでしょう? こういう時は大変だと思うので、好きに使ってやってください」

「ちょっとお父さん! 課長の迷惑も考えてよ!」

 我が父ながら……どうしてこう次々と突拍子もないことばかり思いつくのだろう!!

「――お借りしてもよろしいのですか?」

 父の腕から逃れようともがいていた私は、ピタリとその動きを止めた。
 再び見上げると、課長はクスリと笑みを浮かべている。
< 129 / 195 >

この作品をシェア

pagetop